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全てはあの日から*wt/na ページ2

設定:人間na×魔女

✼ ✼ ✼




その子供は今にも消えそうだった。
骨ばかりの身体は浅黒く、ぼろの布を辛うじて身に巻いている。
その様は今まで見てきたどの生き物よりも貧相だった。

地面にへばりついて動かない子供に、声をかけたのは本当に気まぐれだったのだ。


「うちにくる?」
「あんたは……」
「私は……そうね、人間たちには氷の魔女Aって呼ばれてる」
「こ、おりの……まじょ……」


それでもこちらをぎょろりと見上げた大きな瞳が美しかったから。
ちょっとの間、手元に置いて飾っておいてもいい。
そんな風に思って手を差し伸ばした。


「名前は?」
「なか、む……」
「そう、なかむね」


それだけだったのに___








✼ ✼ ✼







「ねぇ、偉大なる魔女サマはいつになったら俺のこと伴侶にしてくれるの?」


あれから幾年月が経ったのだろうか。

外面の大層整った青年・なかむが、少し拗ねたようにこちらを見てくる。
あの頃の面影などその瞳と髪の色くらいしかないが、間違いなくあの時拾った子供だった……はずなんだけど。
ここは立派に成長したと喜ぶべきなのだろうか。

すっかり大きくなった我が子に感慨深いものがある、と現実逃避していれば。
どうやら思考を飛ばしていることに気づかれたらしく、握られた手をつつとなぞられて思わず声が上がった。


「ひゃっ!だ、だから母にその気はないって……」


くすぐったくて逃げようとするが離してくれない。
長く伸ばした前髪から覗いたアクアマリンの宝石が、私を見てぎらりと輝く。


「母、ね。そんなこと一度も思ったこと無いけど」
「え……」


確かに彼はうちに来て今日まで、私のことを母と表す呼び方をしてくれたことは一度もなかった。
それでも何だかんだ自分なりに彼のことを慈しんで育ててきたつもりだったし、慕ってくれていると思っていたのに。

さすがにそう言われてしまえばショックで彼を見れば、その眼差しからじりっと熱が伝わってきて思わず腰が引けてしまう。
彼はそれを見て、さも愛しいと微笑んだ。


「ね?A、いい加減諦めて俺に愛されてよ……」





end.

✼ ✼ ✼

// しらたま。→←始めに。



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しらたま。(プロフ) - るあさん» るあさん!返信が遅くなってしまい申し訳有りません!何かしらで通知を見逃してしまっていたようです(汗) コメ頂きありがとうございます!ntjさん少し特殊なお話でしたが受け入れて頂けてとても嬉しいです^^ 残り数日、お付き合いくだされば幸いです✨️ (4月25日 2時) (レス) id: 5d28ad3807 (このIDを非表示/違反報告)
るあ(プロフ) - 拾われた子とその恩人の話好きなので嬉しい、!特に'それはきっと素敵なこと'が好き!善意から距離取ろうとする主人公と接し方が分からないinrさん可愛すぎました、私もあのご夫婦大好きなのでメインなのも嬉しかったですれ!! (4月17日 17時) (レス) id: cdc395c024 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しらたま。 x他4人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2024年2月20日 18時

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