それを想っているならば【tn】 ページ9
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「ごめんやで、とんち」
「っは、なんやて、？もっかい、いってや」
焦ってる彼に優しくいう。
「別れよ」
「、ぇなんで、？おれ、おれなんか、悪いことしたぁ、？」
涙目でいうとんちを見るには、痛むこの心を圧し殺さないといけなくて。
「ううん。とんちはなんも悪ないよ」
「じゃぁなんでなん、Aは俺のこと嫌いになったん、？」
ずっと聞いてくるのが鬱陶しくて、つい声を張り上げる。
「っそうやよｯ！！っもう、好きやない、よ、」
ごめん、きょうは、かえって。
力なしにそういう頃には、涙が溢れて止まらなかった。
「っ、」
『もう好きじゃない』
これまでにないくらいの失言をしてしまい、
直ぐに後悔と冷や汗に追われる。
「とん、ちっ、がくて、まってごめ、ねぇ、」
「なにが違うん？」
「へ、」
彼の口からは酷く冷たく低い声が聞こえた瞬間、私の体は彼に近づくことを諦めた。
「ごめ、なさっ、ぁ」
「なんで泣くん？なぁ、フったんはそっちやんか」
「ご、っめ」
「謝らんでええわ」
そう言い残しドアノブに手を置く彼を、逃すことはできなかった。
「ね、まってとんち、」
「なに」
「わっ、わた、し別れたな、い」
「...」
彼はどう思ってるのだろうか。
ドッキリとでも思ってるのだろうか。
そんなの許されないとも思ってるのだろうか。
それとも、＿＿＿
「、ほんっま、心臓に悪いわぁ、」
「、とんち、？」
ドアノブに置いてあった手は、いつの間にか首元にあって。私の体は彼に委ねられた。
「...先輩になんか言われとるなら俺に言ってええんやで」
「ぁ、」
『富田さんは貴方みたいなのに夢中になる程アホやないから』『まさか本気で信じとるとか？笑』『こんなあんぽんたんなら信じとるやろなぁw』
思い出したくもない声、言葉、顔が一気に脳内へ流れ込む。
「ぅ、ごっ、ごべ、ごめ“んなさ”ぁ、ｯ」
「怒ってへんよ」
「っ、わた、ｯとんちとつりあっ、う“ぁ、」
「俺にはAしかおらへんわ」
栓を外したダムのように瞳から涙が流れ出る。
「ほんまぁ、？ほんまにっ、」
「ほんまほんま。俺もウソ上手やないねん」
「ｯへへ、とんち、っ好きやよ」
「俺も、愛しとるで」
ぎゅっと暖かいものに包まれて、私は意識を手放した。
「＿＿ほんまにAはアホやなぁ」
こんなに簡単なウソを見破ることができないのは、
きっとなにかに盲目になって目が眩んでいるのだろう。
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作者名：シロクも | 作成日時：2024年2月27日 0時
