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「いや、なんか元気ないなぁって」
いつもはヘラヘラしていて白々しい奴のくせに、こういうときは察しがいいから。
「そうかぁ?気のせいちゃう」
「...」
そうすか。と、何か腑に落ちないような声でそう言われる。
「もう遅いよチーノ。帰ったら?」
「...ねぇ先輩」
次は悲しいような声で。
「んー?」
「話してください」
次は真面目な声で。
「なにをよー」
「目みて?」
次は優しい声で、目を見ろと命令を。
「...」
「何かありましたか」
目を合わせず頑なに立っていると、ゆっくりと後輩は腰を下ろし、私と目線を合わせた。
「なにもないよ」
「ここは、なんか言いたそうですけどね」
ふわっと笑いながら、私の頭を優しく撫でる。
どこまで心をよんでいるんだ。
「...失恋しちゃった」
ぽつりぽつりと先ほどまでのことを話す。
「、、そうですか。」
そういうと、どこか辛そうに眉を下げる。
「じゃあ先輩」
次は何かを提案したようにしっかりと目を合わせてくる。
「その失恋で、自分はダメだなと思いましたか」
「っえ?」
「自分はいらないとか思いましたか」
「...んまぁ、おもったよね」
「そうですか」
さっきとは違って、何か納得したように頷く。
「その心配はないです!」
「え、」
「俺は先輩のいいところいっぱい知ってるから!
先輩は俺を、俺が守るから!先輩は俺に必要です!」
もし、チーノの言ってることがその場凌ぎのための嘘だとしたら。もし、そんなこと思ってなかったら。
そう思うだけで泣きたくなるけど、何故だか信じられる気がした。
「そっ、かぁ」
「そうです!」
「ありがとぉちーの」
感謝の気持ちを伝えるとにっこりと微笑んでくれた。
『_今校舎内にいる生徒は、10分内に帰路についてください』
そんな放送をきっかけにチーノは私の手を取り立ち上がった。
「帰りましょう、先輩」
「、、うん」
泣いたからなのかチーノに全部話せたからなのか。
まぁどちらにせよ、スッキリとキッパリと諦めることができてよかった。
「俺が先輩を守りますから!」
もう一度振り返ってそういうチーノは、彼によく似合った満面の笑みを浮かべていた。
「__ずっと、好きだったんだけどなぁ」
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作者名:シロクも | 作成日時:2024年2月27日 0時