【d！】短編集【wrwrd】 (ページ2)

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哀の告白【kn】ページ2

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『泣くときはにかっと目が閉じるくらい笑わなあかんで！』

ふと、いつかのシッマのことばを思い出した。
泣きたくて泣きたくてどうしようもないときは、笑ってその涙を落とせと。
シッマにしてはいい教えだ。、、シッマにしては。

「ねぇシッマ」
「んぉ-？」

そんな言葉を思い出したからか、喫煙所で仲良くタバコを吸っていた隣の男に声をかける。
返事がとても間抜けなモノで、笑みがこぼれてしまった。

「何わろてんねん」
「不可抗力」
「はぁ、、？でなんで呼んだん？」

少し戸惑いつつもタバコを吸うのをやめてこちらへ向いてくれるこの人を、やっぱり好きだなぁとおもう。
でも、私は知っている。
この男が既婚者であることを。
別に隠しているわけじゃないだろう。なぜならば、彼の左手薬指にはとても綺麗な指輪があるから。

今すぐ外して海に捨ててやりたいが、
それだと、とてもじゃないがどこぞの屑のようになる。

「あの、っさ」

なぜ今、あの言葉を思い出したのだろう。
なぜ今、既婚者の男に告白しようと思っているのだろう。
なんにせよ、意味はないことだと思う。
けれど、今ここで言わないと何かが終わる気がしてならなかった。

「あのね」
「おん」

静かに話を聞いてくれようとするこの男に、期待をさせないでくれと、嬉しいじゃないかと、怒りそうになる。
でもそれは理不尽だから。こいつは理不尽なことが嫌いだ。
何時迄もこいつのことを考えてしまうわたしになのか、
はたまたこいつの優しさになのか。
なんなのかは知らないが、鼻がツンと、目の奥が熱く、
なるような気がした。

「っえ、どうした」
「ｯあのねしっまｯ！！！」

心配してこちらに伸ばしてくるリングのついた手を弾くように、相手の声をさえぐように。
私は大きく叫んで空気を吸った。
そして、にかっと笑う。

「わたしさ、しっまのことすき！！！」

彼の目は、いつものような澄んだ空色ではなく、
深い深い海のような哀色だった。

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