-8-あの日のキーホルダー。 ページ8
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私にぐちつぼくんの隣に立つ権利は無いし、
黒瀬さんに勝てるような美貌もない。
でも、あとほんの少しだけ好きでいさせて欲しい。
『…わがままかなぁ、私。』
ベッドに寝転んで独り呟く。傍にある机の隅にはぐちつぼくんがくれた手作りの粘土のキーホルダー。…そういえば、私の誕生日のときに俺がつくった!って自慢して渡してくれたなぁ。確か中一のときに貰ったんだっけ。
『……ふ、へたくそ』
手に取って眺める。彼が言うにはこれは犬だと言うけれど、私から見ればどう見たってクマだ。…いや、クマじゃない。ネコとネズミが合体したみたいなやつ。まぁとりあえず、とても上手とは言えない造りだ。でも今までに貰ったプレゼントの何よりも嬉しかった。
学生カバンをベッドの上に持ち上げてストラップを付けるようなフックに、ぐちつぼくんから貰ったキーホルダーをつける。久しぶりに持ち上げたコレに妙に愛着を感じてしまって、どうも考えが至らずにつけてしまった。
きっとこれは、黒瀬さんへの対抗心なんかじゃない。
ぐちつぼくんへの想いの気づいて欲しさじゃない。
きっと、違うんだ。
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「おはよー、A」
『あ、おはようございます』
どこか気だるげな声が聞こえて振り返ると、朝練終わりなのかジャージ姿で登校するらっだぁさんがいた。
らっだぁさんはすぐに私のカバンについているキーホルダーに気づいて、指でツンツンとつつき始めた。
「なんこれ、…あー、犬か」
『エッ、犬に見えます…?』
「え、なに違うの?犬でしょこれは」
『クマに見えません………?』
見えん、と間髪入れずに答えるらっだぁさん。その後も''いやこれはどう見ても犬''と必死に言うから犬って事にしておいた。まあ実際犬なんだけど。
''「いや、これは犬にしか見えなくね!?」''
ぐちつぼくんがコレをくれた時と同じようなことをいうらっだぁさんに笑みが零れる。なんか似てるなぁ。
「んで、これ自分で作ったの?…なんか、うん。へた」
『ふふ、やっぱへたですよね、コレ。』
なぜか嬉しかった。なんで嬉しかったのかは分からない。でも、そのキーホルダーに気づいてくれたときも、犬だとぐちつぼくんと同じような主張をしているときも、なぜか私は頬が緩んでたまらなかった。
きっとこれも、ぐちつぼくんに関係するからなんだろうな。
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カフェラテ好きののあ。 - また更新!?ありがとうございます神作者様!! (3月9日 11時) (レス) @page18 id: de8cd53295 (このIDを非表示/違反報告)
すいみん。(プロフ) - 死ぬほど好きです。もどかしくなる度グワーーーと叫び出したくなるぐらいのめり込んでいました。更新、無理なく頑張ってください。 (12月29日 21時) (レス) @page17 id: f12e90341c (このIDを非表示/違反報告)
レノ(プロフ) - めちゃタイプです〜🥹✨素敵な作品ありがとうございます、、、😻😻 (12月23日 2時) (レス) @page17 id: 917f3c209a (このIDを非表示/違反報告)
カフェラテ好きののあ。 - 久々に見たら更新されてた...!(歓喜)更新大変だと思いますが(無理のない範囲で)頑張ってください!! (12月9日 11時) (レス) @page17 id: ee761176f2 (このIDを非表示/違反報告)
アスカミ - うわ!!神!コメントははじめましてですね。ですが今年の7月から楽しみにしてました!!更新楽しみにしてますね!体調気をつけ、程々にがんばってください。 (12月3日 21時) (レス) @page17 id: 6edaad17fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:万年金欠の佐伯さん x他1人 | 作成日時:2023年1月29日 22時