-4-落ちる音、堕ちる音。 ページ4
・
保健室についたはいいものの、先生が不在なためぐちつぼくんに処置をしてもらう。どうやら2年連続で保健委員なんだと。俺がやる！と意気込んだぐちつぼくんはどこか幼く、可愛く見えた。
「…もーちょい足上げて」
『……うん』
言われたように足をあげる。ぐちつぼくんに支えられる為に触られている部分がジリジリと熱を帯びる。絶対今顔赤いだろうな、バレてないといいな。
「うし、かんりょー。俺がやったからにはもうすーぐ痛くなんかなくなる」
効果音がつきそうなほど眩しく笑うぐちつぼくん。
……やめてよ、わたしにその笑顔を向けないで。
この間まで私にだけ向けて欲しいと思ってた笑顔だけど、諦めようとしている恋にもっと踏ん切りがつかなくなってしまう。
椅子からたって湿布や消毒液を棚にしまうぐちつぼくん。…やっぱり、綺麗な瞳。
＿＿＿『……わたし、ぐちつぼくんが好き』
ピンセットの落ちる音がした。
ハッとして顔をあげる。
嘘だ、何言ってんの、わたし。
ありがとうって言おうとしたのに、なに、なんで？
ぐちつぼくんの方を見ると、彼は目を見開いてから慌てて落ちたピンセットを拾う。
「…な、冗談か？」
ヘラヘラといつもの口調で聞いてくる。
『……冗談じゃないよ。…ぐちつぼくんが、すき。』
止められなかった。
言うはずじゃなかった。この気持ちを伝えてしまったらぐちつぼくんは困るだろうし、この先友達としても居られない気がしたから。なのに、どうして言ってしまったのだろう。
「……ごめん、…彼女が、いるから…」
ぐちつぼくんはどこか悲しげに目を泳がせながらそう言った。……そうだよね。
『…うん、……これ、言わないつもりだったんだけどなあ…』
はは、と自嘲気味に笑う。
ぐちつぼくんは相変わらず気まずそうに視線を外している。
「……じゃあ、俺先に戻ってるから」
静かな空間に取り残されたわたし。
本当に言うはずじゃなかった。言わなければよかった。
でも、気持ちを伝えたあの一瞬だけ。
今までの1度も映れなかった瞳に、あの揺れる瞳に私が映ってた。
言ってしまった、という後悔の念が後になって私を追い詰める。
ほんとうに、なんで言っちゃったんだろう。
悲しそうに目を泳がせた彼と、その後の冷たいと言えるような態度を思い出して、泣き出してしまう。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1212人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カフェラテ好きののあ。 - また更新！？ありがとうございます神作者様！！ (3月9日 11時) (
レス) @page18 id: de8cd53295 (このIDを非表示/違反報告)
すいみん。(プロフ) - 死ぬほど好きです。もどかしくなる度グワーーーと叫び出したくなるぐらいのめり込んでいました。更新、無理なく頑張ってください。 (12月29日 21時) (レス) @page17 id: f12e90341c (このIDを非表示/違反報告)
レノ(プロフ) - めちゃタイプです〜🥹✨素敵な作品ありがとうございます、、、😻😻 (12月23日 2時) (レス) @page17 id: 917f3c209a (このIDを非表示/違反報告)
カフェラテ好きののあ。 - 久々に見たら更新されてた...！(歓喜)更新大変だと思いますが(無理のない範囲で)頑張ってください！！ (12月9日 11時) (レス) @page17 id: ee761176f2 (このIDを非表示/違反報告)
アスカミ - うわ！！神!コメントははじめましてですね。ですが今年の７月から楽しみにしてました！！更新楽しみにしてますね！体調気をつけ、程々にがんばってください。 (12月3日 21時) (レス) @page17 id: 6edaad17fd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：万年金欠の佐伯さん x他1人 | 作成日時：2023年1月29日 22時
